[メイン] シャマレ : 〇オープニングチャプター
のどかな風景が広がる、山間の村。
雛見沢村は、そんなどこにでもあるごく普通の村だ。
電車なんてものは通っておらず、あるのはバス停一つのみ。そのバスも一日一本しか運行していない。
そんな雛見沢村のバス停に、見慣れない人影が降り立つ。そう、シャマレだ。
外からの人間がこの村にやってきたという噂はあっという間に広がり、村中を駆け巡った。

[メイン] シャマレ :  

[メイン] シャマレ :  

[メイン] シャマレ :  

[メイン] : 「ねぇ…どうしていつも、シャマレちゃんは一人で遊んでるの?」

[メイン] : 「私と遊ぼ!1人より2人の方が楽しいもん!」

[メイン] : 「っ、きゃああああぁぁぁっ!!!いたいっ、いたいいいっ!!!」

[メイン] : 「やめて!!!もううちの子に近づかないで!
 あなたがなにかしたわけじゃないのはわかるけど────」

[メイン] : 「あなたは......呪われているのよ」

[メイン] :

[メイン] シャマレ : がたん、ごとん、ゆらゆら。

[メイン] シャマレ : 初めて乗ったバスって乗り物は、テレビで見たことあるのよりもボロボロだった。
それにガタゴトと、結構うるさい。

[メイン] シャマレ : それでも……何でも良かった。
「モルテ」がうるさいって騒ぎ出さないなら、どんな乗り物でもアタシにとったら落ち着いてられる。

[メイン] シャマレ : 少女の瞳に映るのは、新緑茂る森。
紫の瞳に、鮮やかな自然の力を感じられる緑は、少し眩くて、目を瞬きさせながらも。

[メイン] シャマレ : そう、何をするでもなく。少女はぼおっと窓を眺めて時間を潰していた。

[メイン] シャマレ : そうすれば、プスン。
ガス欠のような音を立てて、バスは止まる。
どうやら今のは停車音だったようだ。

[メイン] : 「……シャマレ、降りるわよ」

[メイン] シャマレ : やつれた少女の母親らしき女性は、シャマレと座席一つ開いた席から立ち上がり、そう呟く。
シャマレの返事を待つもなく、そのまま降りていく。

[メイン] シャマレ : 「……あっ、うん……あ……
 ……そうだ、降りないと」

[メイン] シャマレ : シャマレ、と呼ばれた少女。
紫の髪をツインテールで縛り、口をまるで硬い貝のように閉ざしている彼女は、こくりと頷き。

[メイン] シャマレ : 「それじゃ、行こうか……モルテ
 あなたみたいな人がこの村に……いるかな」

[メイン] シャマレ : シャマレが抱えていた、ボロボロの猫のようなぬいぐるみにそう語り掛ける。

[メイン] シャマレ : そして、とんとん、とん。
飛び降りるように、バスから降りれば────。

[メイン]   : ─────シャマレが抱えるモルテの、その視線の向こう側に立つ、一人の少女。

[メイン] シャマレ : 「……ここが、雛見沢村」

[メイン]   : 季節は夏。ギラギラとした太陽の日差しがシャマレへと差し込まれる。

[メイン]   : ミンミンゼミが忙しなく、その鳴き声を放つ。
都会とはまるで違う、緑の多い自然豊かな場所にて。

[メイン] シャマレ : ぼそりと、呟きながらも。
暑苦しいほどの日差しに、目を瞬いて。

[メイン] シャマレ : ……ん?あれ、今……誰か、いたような?

[メイン] 古手 梨花 : バス停のすぐ傍に、姫カットの青髪と、巫女装束の、小さな女の子が。
真夏の太陽に、汗を掻きながらも、シャマレを見上げ。

[メイン] 古手 梨花 : にっこり!と笑い。

[メイン] 古手 梨花 : そして両手を広げ。

[メイン] 古手 梨花 : 「雛見沢村へようこそなのです!」

[メイン] シャマレ : 無口なシャマレには騒々しいくらいの、自然の力強さ。
それに目を細めながらも、じぃ〜っと、そちらの方を見つめる。

[メイン] 古手 梨花 : 「にぱ~☆」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレを歓迎するように、無邪気で人懐っこい笑顔を向ける。

[メイン] シャマレ : 初対面であれば、シャマレの表情もあり睨みつけているようにも思えるその面だったが。

[メイン] シャマレ : 「…………」

[メイン] シャマレ : ぱちぱち、と目を瞬かせて。

[メイン] 古手 梨花 : 「あ……そっか」
ぼそりとそう呟くと。

[メイン] 古手 梨花 : 「ボクは、古手梨花!
 この村にある、雛見沢神社の神主をやっているのですよ!」

[メイン] 古手 梨花 : えっへん!どや!と腰に手を当て、胸を張るようにして見せる。

[メイン] シャマレ : 「えっと……どうも?
 ……神主、なの?アタシと同じくらいなのに……」
初対面であるはずの彼女の元気さに、少し圧倒されながらも。

[メイン] 古手 梨花 : そう、背丈が同じくらいであり。
シャマレと、そして梨花と名乗る少女は、ちょうど視線も合う。

[メイン] シャマレ : ……元気な子、だな。
最近こうして話しかけられることもなかったから……新鮮だ。

[メイン] 古手 梨花 : 「ふっふっふ、そうなのですよ~?
 でもでも……この村には、あんまりシャ……あなたみたいに
 ボクと同い年の子どもが、いなくて……」
しょんぼりとした顔になりつつ、すぐに戻し。

[メイン] 古手 梨花 : 「だから!こうして同い年のお友達ができそうなので!
 ボクはとっても!ワクワクドキドキなのですよ!にぱ~☆」

[メイン] 古手 梨花 : それはそれは無邪気な笑顔をシャマレへと向ける。

[メイン] シャマレ : 「……うっ……!」
太陽のように眩しい笑顔に、シャマレの目がまた眩む。

[メイン] 古手 梨花 : 「あなたのお名前は?」
笑顔のまま、こてんと首を傾げる。

[メイン] シャマレ : 「そう、なんだ……う、でも、私でいいの?
 私、見ての通り……辛気臭い顔だけど」

[メイン] 古手 梨花 : 強く!頷く!

[メイン] 古手 梨花 : 「いいのです!!」
キッパリとそう告げる。

[メイン] 古手 梨花 : 「それに……すっごく可愛らしいお人形さんを持っているのです!
 きっと、ボクとも趣味が合いそうなのです!」
シャマレの持っているモルテへと視線をやりつつ。

[メイン] シャマレ : な、なんだか……むず痒い。
友達になりたい、とか……久しぶりに聞いたし……しかもこんな直接的に……!
……こ、これが……田舎風の友達作り、なの?

[メイン] シャマレ : 「……!」

[メイン] 古手 梨花 : そのまま強引に、シャマレの片方の手を、梨花の両手で包み込み。

[メイン] 古手 梨花 : 「ボクと、お友達になりませんか?」

[メイン] 古手 梨花 : 少し上目遣いで、目をパチパチとさせながら。

[メイン] シャマレ : 少し、顔を歪ませつつも。
けれど、「モルテ」を褒められたことには、素直に嬉しくって。

[メイン] シャマレ : 口元を、モルテで隠しながら。
遠慮深げに梨花へと目を向けて。

[メイン] シャマレ : 「…………それなら、よろしくね」

[メイン] シャマレ : そっと、手を握り返す。

[メイン] 古手 梨花 : その返答に、ぱぁぁ~っ!と、キラキラエフェクトを周りに浮かべさせながら
にんまりと笑顔になり。

[メイン] 古手 梨花 : 「はいなのです!!」

[メイン] シャマレ : ……何だか……あったかい。モルテを握ってる時はもっと冷たいのに。

[メイン] シャマレ : 「うっ、ま、眩しっ……!?」

[メイン] 古手 梨花 : にぱ~☆

[メイン] シャマレ : キラキラオーラを直視したかのように、目をグッと細めながらも。

[メイン] 古手 梨花 : 「ではでは!村に案内するのですよ~!こっちなのです!」

[メイン] 古手 梨花 : ぐいっ!とシャマレの腕を引っ張り、ぱたぱたと村の方へと走っていく。

[メイン] シャマレ : 「っ……」
思ったより力……強い……!?

[メイン] シャマレ : 貧弱なシャマレは、神主の力に押されながらも連れていかれる。そんな、振り回される中で。

[メイン] 飛段 : そんな中、2人は村の田道を通ることになるだろう
そしてそこで鍬を振り下ろし、土壌を整えているコートの男、そしてそれを近場で眺めている黒服の男の2人組を目にすることとなるだろう

[メイン] 飛段 : 「っべーかったるぃ……なァここってどんだけやれば良かったんだっけなァ…オレ忘れっちまったぜ村長ォ…」
黒服の方にちららと視線を送って

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
問いかけられた、黒服の青年。
しかし、青年は男に目を送るだけで何も口には出さず。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ただ、懐から一枚のメモ紙を取り出すとそこにさらさらとペンを走らせて手渡した。

[メイン] 飛段 : 「おっ……っとぉ!?」
目を見開いて、その後数瞬で笑みを少し浮かべて

[メイン] 須賀 孝太郎 : 男の笑みに一瞬、視線を送って陰のある表情を浮かべた。
だが、すぐに首を振り返らせ。

[メイン] 飛段 : 「つーことは……っと梨花ちゃまァァァ!!」
通りがかった2人の方を向いて、鍬を置きながら

[メイン] 古手 梨花 : 「みぃぃいいいっ!?!?」

[メイン] シャマレ : 「わっ…………」

[メイン] 古手 梨花 : Σ(゚Д゚)
↑こんな顔をし、青髪が逆立つ。

[メイン] 古手 梨花 : 「ひ、飛段!?そうやっていつも脅かすのは、めっ!なのですよ!」

[メイン] 古手 梨花 : ぷく~っ!と片方の頬を膨らませながら、ジト目で飛段を見つつ。

[メイン] シャマレ : 隣でほんの少し、びくっとした顔になるも。
すぐいつものに戻る。

[メイン] 飛段 : 「いっけねェ、脅かっしちまったァ」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレと握った手を離さないまま、視線をシャマレの方へ向けつつ
安心させるように、にこり!と笑い。
再度、二人の方へと視線を移し。

[メイン] 飛段 : ゲラゲラと悪意をまったく感じさせ無い高笑いを浮かべて

[メイン] シャマレ : 「飛段……?」
知ってるの?という顔で、梨花に目をやりながら。

[メイン] 飛段 : 「ンでそっちの方は……お客さんかァァ…?」

[メイン] 古手 梨花 : 「はいなのです!この村の、力仕事が得意なお兄さんと
 そしてその横に立っているのが……」
シャマレの方を向き、飛段の紹介をしつつ。

[メイン] 古手 梨花 : 孝太郎の方へと視線を向け。

[メイン] シャマレ : 手を先程よりも少し強く握るようにしながら。
それでもさすがに驚きは消えないのか、梨花の後ろにこそりと隠れつつ、ちらちら顔をのぞかせる。

[メイン] 古手 梨花 : 「村長さんなのです!」
衝撃発言。

[メイン] 古手 梨花 : そして飛段の方へと視線をやり、お客さんか?という問いに
はいなのです!と答え、こくりと頷く。
にぱ~☆という無邪気な笑顔を向けながら。

[メイン] シャマレ : 「……そんちょう」
ちらりと、飛段と呼ばれた男と、黒づくめの男を見比べて。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 堅い表情を浮かべたまま状況を静観していた青年は、梨花の視線を受けるとつかつかと大きな歩幅でシャマレへと歩み寄る。

[メイン] 飛段 : 「思ったより脅かし過ぎたかなァァァ……?」
あちゃーと顔に泥だらけの手を当てながら、ため息を吐くコートの男

[メイン] シャマレ : 「村長……確か一番偉い人なのに、お仕事頑張ってるんだね......」
都会では、権力者が力仕事に精を出すということは、聞いたことがなかった。

[メイン] 須賀 孝太郎 : シャマレの目線に屈んで。
先ほどと同じように、メモ……やけにファンシーなデザインのものを見せる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『す が  こうたろう
 須 賀  孝 太 郎

 村長です
 筆談(もじで話すこと)をゆるしてください』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『おとうさんとおかあさんは、むらのなかにいます』

[メイン] シャマレ : 立ち寄る彼に、驚いた顔で後ずさる様子を見せようとするも。
……そのメモに、興味が引かれる。

[メイン] 古手 梨花 : そう、この青年は、村長なのだ。
村長といえば普通……もじゃもじゃー!としたお爺さんを想像するだろうが。

[メイン] 須賀 孝太郎 : メモは子供用にひらがなや注釈が多かった。
ペンを走らせることも無かったので、元から用意していたものだ。

[メイン] シャマレ : 自己紹介が口からではなかったことに、目を開き驚きつつも。

[メイン] シャマレ : 「それくらいは……勉強したから、読めるよ
 でも……ありがとう、わかりやすかった」

[メイン] 飛段 : 「っぱオレ達の村長は気が利くやつだぜ!」
メモをチラ見して、ご丁寧にひらがな表記の文字群を眺めながら

[メイン] シャマレ : ぺこっ、と、目の前の村長に頭を下げてお礼を言いつつも。

[メイン] 古手 梨花 : 飛段の言葉に賛同するように、うんうん!と頷く。
梨花という少女も、この孝太郎という村長には気を許しているようだ。

[メイン] シャマレ : 「……あと、これ……貰ってもいい?」
と、そのファンシーなメモを見つめて。

[メイン] 古手 梨花 : この村は、住民達の仲が良く、心が温まるような
そんな長閑な場所であることが、シャマレにも伝わるだろう。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……」
飛段の軽口に、鋭い視線を送り。

[メイン] 飛段 : 「あーー……んじゃオレ他の奴らに伝えて来るわァ!」
或いはサボりたかっただけかもしれないが来客がいる事に比べたら些細なことだろう

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……!」
シャマレの言葉に意表を突かれたような顔をして……こくりと頷く。
気持ち嬉し気な顔だった。

[メイン] 飛段 : そう言って鍬を置いたまま走って何処かへと走り出す
とんでもない速さである

[メイン] シャマレ : ファンシーな柄は、無口なシャマレでも子供心に来るものがあったのだろう。物欲しそうな顔でウキウキとしながらも。

[メイン] シャマレ : 「……!やった……!」

[メイン] 古手 梨花 : お願いするなのですよ~!と、去る飛段の背中に手を振る。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
すぐに表情が引き締まり。飛段を頭を下げて見送る。

[メイン] シャマレ : 少しばかり頬を弛め、メモを受け取りつつ。
梨花に、貰った……!と、嬉しげな顔で見せびらかす。

[メイン] 古手 梨花 : そしてシャマレの方を向き、孝太郎のメモを貰い嬉しそうにしている顔を見て
梨花もなんだか嬉しくなったのか、頬を緩ませる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『お家まで案内するね』
さらさら、と先ほどより漢字の増えたメモを書き上げて二人に見せ。
二人を確認しながら、村の一方向へと先導するように歩き始める。

[メイン] 古手 梨花 : こくこく!と孝太郎に、にぱ~☆という笑顔で頷く。

[メイン] シャマレ : シャマレにとって、この心地は……悪くはなかった。
無愛想な顔が、少しだけ緩むくらいには。
人に踏み込む田舎の雰囲気は、シャマレの気持ちを緩やかにしつつ。

[メイン] 古手 梨花 : そしてシャマレの手を握りつつ。

[メイン] 古手 梨花 : 「ふっふっふ!これから……歓迎会をやるのですよ!」

[メイン] シャマレ : こくり、と小さくうなづいて。
梨花の手を握りながら、目を向ける。

[メイン] シャマレ : 「歓迎会……? そんなに大っぴらにしなくても……」

[メイン] シャマレ : ピクリ、と驚きを示すように眉が動きながら。
それでも、満更では無いのか、気持ち嬉しそうにモルテを握りしめて。

[メイン] 古手 梨花 : 「かわいいかわいいなのです」
そんな、嬉し恥ずかしそうにするシャマレの頭をなでなでする巫女の幼女。

[メイン] シャマレ : 「う、うっ……!? んんうぅ、同い年でしょっ……あぅっ……」

[メイン] シャマレ : シャマレにとって、頭を撫でられたことは親からしか無かった。
ので、驚き半分、嬉しさ半分が混ざった顔で、もにょもにょとしつつも。

[メイン] シャマレ : ……それにしても、なんだか……変な感じだ。
こんなに尽くされる謂れもないのに、いっぱい歓迎して貰える……なんて。
みんな、優しそうだし……これが、田舎の風土……なのかな。

[メイン] シャマレ : ……友達、か……
……はじめましてなのに、こんなに付き添ってくれた梨花は……そうなってくれたらいいな。……モルテのことを知っても、もし友達に……

[メイン] シャマレ : …………。

[メイン] シャマレ : ……アタシ、名乗ってない。
でも、あの時……シャ、なんて言ってた気がする……

[メイン] シャマレ : ……そんなこと、モルテじゃあるまいし。
あるわけないよね。

[メイン] シャマレ : 顔を上げれば、シャマレにも変わらずの笑顔を向けてくる彼女が目に映り。

[メイン] シャマレ : 「……なんでもない。行くよ」

[メイン] シャマレ : たすたすと、深緑の中を2人の足音が響いた。

[メイン] シャマレ : ゆらり、ゆれる木は元気に溢れていて────どこか鬱蒼で。
木が落とす影は、二人の道を暗く示していた。

[メイン] シャマレ :

[メイン] シャマレ :

[メイン] シャマレ :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 : ●御本尊
ある日(主演)が村を散歩していると、(助演)の姿を見つける。
(助演)は何やらぼんやりと、村の中心に佇むそれを眺めていた。
確かあれは、村で「御本尊」と呼ばれるものだったはずだ(巨木や祠など、「御本尊」の形は自由に決定して構わない)。
(助演)と話すついでに、あの「御本尊」について話をしてもいいかもしれない。

★キーワード
御本尊、不思議な力、「この村は守られてるんだ」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 主演:孝太郎
助演:シャマレ

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 : ──歓迎会から数日後のことだ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : シャマレは村へ受け入れられていた。
一種、不気味なほどに。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 孝太郎はシャマレのことを気がかりにしたように、シャマレの様子を見に現れることが何度かあった。
そして、今日もそのように──。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 孝太郎はシャマレに村の各所の案内をするように進み出た。
その途中、小さな祠の前を通りがかる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
ちらりと、視線をシャマレに向ける。
そこそこ歩いた気がする。少し休憩してもいいかもしれない。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『なにか気になったものはありませんか』
小さくメモ書きを見せて。

[メイン] シャマレ : モルテをぶら下げるように持ちながら、孝太郎の隣に歩いており。
何度も出会ったことで、最初に見せていた警戒心は薄れていた。

[メイン] シャマレ : 「……ここって、幽霊とかは出ないの?」

[メイン] シャマレ : 首を傾げながら、そんなことを尋ねる。
シャマレにとっては、自然なことのように。
そして、普通の人から見れば突飛なことを口走る。

[メイン] 須賀 孝太郎 : だが、その突飛な視線に心臓を掴まれたように。
息を漏らして考え込んで──一度祠に視線を向ける。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 祠の周りには警護するように村人がいた。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『ついてきて』
足早にその場を離れ、人気のない方に向かいつつ。

[メイン] シャマレ : こくりと頷き、孝太郎の後を追う。
やけに素直だったのは、歓迎会の時に不気味なほどに受け入れ、それっきり音沙汰がない村人よりも……
村長として接してくる孝太郎のことを、信頼していたこともあるだろう。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『幽霊はいない
 でも、神さまはいるといわれています』
人気のない場所まで来てから、したためたメモを見せる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『さっきの”ほこら”はその神さまのお家です
 御本尊といわれています』

[メイン] シャマレ : 「……神さま」

[メイン] シャマレ : 「それって、モルテみたいに悪いことを撒くの?」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『御本尊にはふしぎな力があります』
しばしば、子供たちのために絵本を書いていた孝太郎は手慣れた様子で村に伝わる伝承を記していく。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「………………」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『御本尊は、悪いことはしませんふしぎな力で村を守ってくれます
 でも、神さまだってお腹が空くときがあります』

[メイン] シャマレ : シャマレは、すんなりと受け入れた。
村に来た数日間の中でも、まるで幽霊や人形が生きているかのように話すシャマレにとって、”神さま”もまた、自然な存在だったのかもしれない。

[メイン] 須賀 孝太郎 : モルテ──手の人形の名前だったっけ。
目をちらりと向ける。人形が友達ってことはあるけど悪いことを撒く……なんて。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 短い時間だが、村長としてシャマレの家庭環境についてはある程度把握していた。
人形は子供にとって一番身近な友達になれるもの。
それですら”悪さ”と結びついてるのは悲しいことだと思った。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 孝太郎の眉が歪み、話の続きを書く手が止まる。

[メイン] シャマレ : 「あぁ……モルテと一緒だね。
 モルテは、マイナスの気持ちを食べるの。
 …………。……大丈夫?孝太郎」

[メイン] シャマレ : すらすらと、文字を書いていた彼の動きが止まったことに。
無表情な顔にも、少し心配の色をのぞかせつつも。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……!」
ふるふると首を振る。もう多くのことを背負っているこの子には、自分のことなんて気にかけてほしくない。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 心配させまいと手を動かし、話の続きを書く。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『神さまにはもごはんが必要です
 お世話になっている村の人は神さまにごはんをあげます』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『それが儀式(ぎしき)です』

[メイン] シャマレ : ……孝太郎は……村長さんは……優しい人、なんだろう。
こんなアタシを気に掛けてくれるのは、村の中でも珍しくて。
だから、余計……モルテが、アタシが迷惑をかけてないかって気になってしまう。

[メイン] シャマレ : 「……ごはんをあげるのが、儀式」

[メイン] シャマレ : 「……さっき村の人がいたのも、ごはんをあげるため?」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『いいえ
 儀式は大切な日だけに行います』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『あの人たちは神さまを守っています』
少しだけ表情を険しくしつつ。

[メイン] シャマレ : 理解したように、首を軽く動かし、孝太郎に目を向ける。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『儀式はお祭りのようなものです
 鬼隠し編、綿流し編、祟殺し編、目明し編、罪滅し編、祭囃し編
 さまざまな儀礼を行って神さまに捧げます』

[メイン] シャマレ : ……モルテに似てて、でも…ちょっと違う。
モルテなら、むしろ……嫌われるのに、好かれてるみたいで。
……なんだか、少し……気味悪さがある。

[メイン] シャマレ : 「……そんなに多いんだ」
ぽつりと率直に漏らしながらも、耳は傾けながら。

[メイン] 須賀 孝太郎 : こくりと頷いて。
付け加えるように指を1本立てて。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『そして最後に ”皆殺し編”があります』

[メイン] シャマレ : 「……!」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『そこでようやく神さまに食べものをあげることになります』

[メイン] シャマレ : 皆殺し。シャマレは、その漢字の表す意味を理解できていた。
たらり、日差しの暑さとは別に汗を浮かべながら。

[メイン] シャマレ : 「……た……食べ物って……なんで、食べ物をあげるだけなのに。
 そんな名前なの?」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……………………」
どうやら、シャマレは意味に気付いたようだ。
賢い子だ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 何度か逡巡し。指を動かそうとすると。

[メイン]   : 「おーい村長!なにやってんだー!?」

[メイン] シャマレ : 時刻は一時を回っており、昼下がりに入りそうな時刻だというのに。
シャマレの体には、冷たい寒気が侵蝕していく。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 遠くから村人の声。

[メイン] シャマレ : 「…………!」

[メイン] 須賀 孝太郎 : ハッとしたように振り向いて。
手早くメモに言葉をしたためると、シャマレに一礼して手渡す。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 焦りを滲ませた顔で、孝太郎は村人の方に駆けていく。

[メイン] シャマレ : 「…………」

[メイン] シャマレ : 村人、そして孝太郎。
二人の顔を交互に見つめながらも、冷や汗に濡れる手でメモが湿る。

[メイン]   : 最後のメモには、走り書きでこう書かれていた。

[メイン]   : 『巫女と飛段 気を付けて』

[メイン]   :

[メイン]   :

[メイン] シャマレ : ●村の奥地
ある日、シャマレが村を歩いていると、ぽっかりと口を開けた小さな洞窟を見つける。
好奇心に駆られて入ってみると、そこには梨花の姿があった。
どうしてこんなところに?いやそもそも、ここは一体何だ?
気になったシャマレは、梨花に話を聞いてみることにした。

★キーワード
洞窟、開けた場所、「どうしてこんなところに?」

[メイン] シャマレ :  

[メイン] シャマレ :  

[メイン] シャマレ :  

[メイン] シャマレ : ジージーと、セミの鳴く声が響き渡る。

[メイン] シャマレ : そこは、村から少し外れた開けた森。
村人も整備もしていないのか、人の力が入っておらず、自然が広がるそこ。

[メイン] シャマレ : 太陽の暑さが残るはずの昼時は、シャマレにとってはなぜだかじっとりとねばつく暑さとして感じられる。
握った紙がじっとりと濡れるのを、気持ち悪く感じながらも。

[メイン] シャマレ : ────『巫女と飛段 気を付けて』

[メイン] シャマレ : この言葉の真意を確かめるために、シャマレは今も、足を動かしていた。

[メイン] シャマレ : そして、森に入り少し息が上がったころ。
開けた場所に入り、息を吸うために、シャマレがゆっくりと、顔を上げれば────。

[メイン] シャマレ : ────探していた、彼女がそこにいた。

[メイン] 古手 梨花 : そこは、洞窟であった。

[メイン] 古手 梨花 : そして、木々が生い茂る中にぽつんと、異彩を放つ鳥居もあり。

[メイン] 古手 梨花 : その奥に─────青髪の少女、梨花が。

[メイン] 古手 梨花 : 祠と思わしきものがある場所にて………。

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] 古手 梨花 : 小刀を、取り出していた。

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] シャマレ : 「……なっ」

[メイン] 古手 梨花 : 「─────っ!?」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの声に反応し、暗い洞窟の奥にいる梨花が、ばっ!と振り返る。

[メイン] 古手 梨花 : その表情には焦燥の色があり
そしてシャマレと目が合い。

[メイン] 古手 梨花 : 「シャ、シャマレ……!?どうして、ここに……!?」
冷や汗を垂らしながら。

[メイン] シャマレ : シャマレの顔が、一気に険しいものへと変わる。
それは、少女が到底持つべきでは無いもの。

[メイン] シャマレ : 「……どうして、って……梨花……
 それは、私が聞きたいこと。」

[メイン] 古手 梨花 : 「あうぅ……」
思わず、視線を逸らしてしまう。

[メイン] 古手 梨花 : ─────そう、梨花はここに……儀式の道具を壊すために、やって来たのだ。

[メイン] 古手 梨花 : 村の巫女である梨花は、当然のことながら、それを口にするわけにはいかない。

[メイン] 古手 梨花 : そも、儀式にシャマレが選ばれたということ自体、口にしてはならないのだ。

[メイン] シャマレ : 「……"神さま"って、何?
 "皆殺し編"は……何をするの?
 "ごはん"は、何を食べるの?」

[メイン] 古手 梨花 : 梨花自身も、シャマレを無駄に煽る必要はない、と考えている。

[メイン] 古手 梨花 : 「─────え?」

[メイン] 古手 梨花 : ……が、その考えは、打ち砕かれた。

[メイン] 古手 梨花 : 「ど、どうして……それを、知って……?」
目が、大きく見開かれる。

[メイン] 古手 梨花 : こんな世界線は、無かった。

[メイン] 古手 梨花 : シャマレが事実を知る時は、いつも梨花が彼女に伝える時のみであった。

[メイン] シャマレ : そんな梨花の焦りは知らず、シャマレ自身の疑問を口に出していく。
……あのメモを、信じたくはなかった。でも…………

[メイン] シャマレ : 梨花の顔が、それの信憑性を物語っている。

[メイン] 古手 梨花 : もちろん、その周回では─────バッドエンドだ。
だからこそ、梨花は慎重に慎重を重ねてきたのだが……。

[メイン] 古手 梨花 : 「と、ととと、とにかく!なんでもないなのですよ!」

[メイン] 古手 梨花 : 小刀を後ろにサッ!と隠しながら、片方の手を振る。

[メイン] シャマレ : その問いに対して、シャマレは何も言わず、メモを見せつける。
────村長が連ねた、『気をつけろ』というメッセージを。

[メイン] 古手 梨花 : イレギュラーの事態であった。これは梨花を大きく当惑させた。

[メイン] 古手 梨花 : 「えっとえっと、えっと……!
 こ、ここは!天井とか崩れたり……あとあと!
 野生の、こわーい動物さんがやってくるなのですよ!」

[メイン] 古手 梨花 : 「危ない危ないなのです!だ、だから……おうちに!」
あたふたとしながら、必死に弁明をする。
誤魔化すという方向で。

[メイン] シャマレ : 「……話、逸らさないで」

[メイン] 古手 梨花 : 「みぃっ……!」
びくんっ!と体が跳ね上がる。

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの冷たい声に、梨花の表情が曇っていく。

[メイン] シャマレ : じっと、梨花に目を向ける。睨むようで……どこか、悲しげな瞳で。

[メイン] 古手 梨花 : そんな、目で、見ないでっ……!!

[メイン] シャマレ : 「村長が教えてくれた……
 ……モルテみたいに、人の気持ちを……ううん。
 ────アタシを"ごはん"にするつもりなんでしょ……アンタたちは」

[メイン] 古手 梨花 : 「─────ッッ……!?!」

[メイン] シャマレ : ちらりと、ボロボロの人形を目にしながらも。 また、梨花に目を向けて。

[メイン] 古手 梨花 : シャマレは─────本当に、知っていた。
そして、それが事実であるからこそ、梨花の顔が固まる。
分かりやすい反応を、示してしまう。

[メイン] 古手 梨花 : 「そ、それ、は……」

[メイン] シャマレ : 「……別に、それを悲しいなんて思わない
 どうせ、いつかモルテに食われるだろうと思ってたから」

[メイン] 古手 梨花 : 「なっ………」

[メイン] シャマレ : その反応に、顔が、歪む。
……やっぱり……そうだったんだ。……一番、当たって欲しくないことだったのに……

[メイン] 古手 梨花 : どうしたらいいのか、分からない、といった様子で
ただただ、何に対しては分からないが、懇願するようにシャマレを見つめたまま。

[メイン] 古手 梨花 : 「ち、違うなのですよっ!!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 張り裂けそうな声が、洞窟内に響く。

[メイン] シャマレ : 「……違わない!!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「みぃっ………!?」

[メイン] シャマレ : 森の中、叫び声が木霊する。

[メイン] 古手 梨花 : びくんっっ!!と跳ね、そして身が縮こまるように
そして、涙目でシャマレを見つめ。

[メイン] 古手 梨花 : そん、な……!

[メイン] 古手 梨花 : どうして……!?こんなの、わかんない……!

[メイン] シャマレ : 「アンタは、お母さんみたいに、アタシを除け者にするつもりだったんでしょ……!?
 ……友達なんかじゃない、生贄にする為に……ッ!」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの悲痛の叫びが、梨花の心をさらに痛ませる。

[メイン] 古手 梨花 : 知っている。

[メイン] 古手 梨花 : ……シャマレは、本当に辛い目に遭ってきた。

[メイン] 古手 梨花 : ボクは、知っている。

[メイン] シャマレ : 叫ぶ中、涙が滲み出る。
……アタシが……拒絶してるだけなのに……なんで……こんなに……苦しいの……!!!
……こんなの、モルテに漬け込まれるから、ダメ、ダメなのに...!

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの境遇を聞いた時は……ボクは……
……私は、すごく、心が、痛かったッ……。

[メイン] 古手 梨花 : 涙が、ボロボロと零れ始める。

[メイン] 古手 梨花 : 私だって、そうだ。
シャマレも、私も……親の"操り人形"に過ぎなかった。

[メイン] 古手 梨花 : だからこそ……私は、シャマレに、すっごく共感するものがあって……。
初めて、私の……理解者に、出会えたって、そう思えて……。

[メイン] シャマレ : …………梨花は、こんなアタシでも……話しかけて、一緒に友達として接してくれた。
……わかんない。……本当は……本当は……違うんじゃないか、って気持ちもある……

[メイン] 古手 梨花 : だからッッッ……!!!!!

[メイン] シャマレ : 「っ…………!」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレが!!儀式で、死なないような……!!!

[メイン] 古手 梨花 : そんな、未来が、あったって……いいじゃないッ……!!

[メイン] 古手 梨花 : 「……お願い、いかないでっ……」

[メイン] シャマレ : 叫び終え、顔を上げた時。
彼女が涙を流す顔に────1歩、たじろぐ。

[メイン] 古手 梨花 : 震える声で、そう告げ。

[メイン] 古手 梨花 : ぽとりと、小刀を地面に落とし。

[メイン] 古手 梨花 : 「お願い……そんな、私を……拒絶するような目で……見ないでっ……」

[メイン] シャマレ : 「……………………」

[メイン] 古手 梨花 : ぽた、ぽたと、冷たい岩盤に、染みが出来ていく。

[メイン] 古手 梨花 : 「私は、私はっ………!」

[メイン] シャマレ : 震えるような、か細い声は……
……到底、自分を貶めるようなことが出来るとは……思えなくて。

[メイン] 古手 梨花 : 「…………」
視線を下へと向け……そして、決心をし。

[メイン] 古手 梨花 : やがて、シャマレの瞳を、真っ直ぐと見て。

[メイン] 古手 梨花 : 「………隠し事は、してた……ごめんなさい」
まずは、頭を下げ。

[メイン] 古手 梨花 : 「……ええ、あなたの言う通り……このままではあなたは……
 儀式によって……」
その先の言葉は、紡げずに、唇を噛みしめ、苦悶の表情を。

[メイン] 古手 梨花 : 「……でも!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「違うのっ!!!これだけは、本当の、本当なの……!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「私は……あなたを……!どうにかして、生かしたくて……!!」

[メイン] シャマレ : 顔を、歪ませる。その事実を、梨花の口から告げられたことに。

[メイン] 古手 梨花 : 「それで……何度も、何度も何度も何度も……!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!!」

[メイン] シャマレ : 「……え……?」

[メイン] 古手 梨花 : もはや、怒りを発露するように。

[メイン] シャマレ : 「……っ!?」

[メイン] 古手 梨花 : ズンズンと、シャマレの方へと強く歩いていきッ。

[メイン] 古手 梨花 : 「何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もッッッ!!!!!!!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 血相を変え、シャマレを強く見て。

[メイン] シャマレ : 「…………ッ!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 話さなくてもいいことを、話してしまう。

[メイン] 古手 梨花 : 「死んで、死んで、死んでを繰り返してッッ!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「それでも!!!諦めずに……!!まだやれるって信じて!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「ここまで、やってきたのよッッッ!!!!」

[メイン] シャマレ : まるで────人が変わったかのように。
むしろ、隠されていた"ウラ"の顔が、暴かれたかのように。その血相は、シャマレの知る梨花とは別物で。

[メイン] 古手 梨花 : そして、シャマレの目と鼻の先まで最接近する。
梨花の青い目からは、ダムが決壊したように、涙が止まらず。

[メイン] シャマレ : 「────なっ……」

[メイン] 古手 梨花 : そう─────古手 梨花は……。

[メイン] 古手 梨花 : 世界線を、繰り返してきたのだ。

[メイン] 古手 梨花 : シャマレが死なない世界を、掴み取るために
そして失敗した時は、その身を滅ぼした。
つまり、自殺をした。

[メイン] 古手 梨花 : 彼女は、不思議な力を手にしたのだった。
それは、神の気まぐれによるものなのか?

[メイン] 古手 梨花 : この夏を、己が望む未来を掴むまで、何度でも繰り返せる力を手に入れた。

[メイン] 古手 梨花 : ほんの数ヵ月の出来事ながらも、彼女にとってはもう─────。

[メイン] 古手 梨花 : ─────一体、何年の出来事だろうか。

[メイン] 古手 梨花 : 果てしない繰り返しであった。

[メイン] 古手 梨花 : 「そもそもねぇッ!!!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「あんた!!!死に過ぎなのよッッ!!!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「ばーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーか!!!!!!」

[メイン] シャマレ : ……死んで、死んで、死んで、繰り返して……?
アタシを助けるために……何度も、何度も……?
…………そんなことあるとは思えない。
……あるとは……思いたくない……。
だって……本当にそうなら。

[メイン] 古手 梨花 : 今まで積み重ねてきたものまでもが、雪崩のように落ちていくように。

[メイン] シャマレ : 「っ......!?」
目の前の少女からは出されたとは思えない声に、びくっ、と体を震わせつつも。

[メイン] シャマレ : 「………………アンタ……」

[メイン] 古手 梨花 : キッッッッ!!!と、シャマレを強く睨んで。

[メイン] シャマレ : 「…………ごめん」

[メイン] 古手 梨花 : 「…………っ………」

[メイン] 古手 梨花 : 「……そんなの、そんなのっ……う、ぅぅうっ……!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「うああぁぁああぁぁぁあああああぁぁぁああぁぁああぁぁぁあああぁあッッッッッ!!!!!」

[メイン] シャマレ : 頭を、深く、梨花に、下げる。

[メイン] 古手 梨花 : 梨花は、大号泣をした。
子どものような。

[メイン] 古手 梨花 : そして、糸の切れた操り人形のように、ぺたりと地面に座り込み。

[メイン] 古手 梨花 : わんわんと泣いた。

[メイン] シャマレ : 「…………アタシの知らない所で、そんなに……頑張らせちゃって……ごめん
 ……裏切ったなんて言って……ごめん」

[メイン] シャマレ : お姉さんのように振舞っていた彼女が、子どものように泣きじゃくる姿に。

[メイン] シャマレ : ……ぎゅっ、と、小さく抱きしめて。

[メイン] 古手 梨花 : 「うるさいっ……!うるさいわよぉおっ……!!
 私のこと、なーーんにも知らないくせにっ……!!!
 わあぁぁああぁぁあああぁぁぁんっっ……!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「─────っっ……!!!」

[メイン] シャマレ : 落ち着かせるために、優しく、彼女を支える。
……自分でも分からず、また、涙をポロポロ零しながらも。

[メイン] 古手 梨花 : 包み込まれる、あの子の体温に─────。

[メイン] 古手 梨花 : それがやがて、荒ぶる梨花の感情を、徐々に、徐々に……和らげていった。

[メイン] 古手 梨花 : ひっぐっ……ひぐっ……!と体を震わせながら。
まるで母親に甘える子どものように、シャマレに抱き着いていた。

[メイン] シャマレ : 「……アタシは……アンタを……知らない……
 ……独りになる辛さは、アタシだって……わかってるのに……」

[メイン] シャマレ : ……どこまで、いつまで、どのくらい、梨花は……繰り返したんだろう。
そんなのも、アタシは知らない。
ズルい。ズルい。……独りに背負わせてるのに、アタシは、なんも知らない顔で……

[メイン] シャマレ : 疑って、信じなくて、拒絶……して……

[メイン] シャマレ : 「りか……っ……アンタの言う通り……アタシはっ……バカよっ……!
 だって……繰り返しの中で、ずっと一人ぼっちだったアンタを……」

[メイン] シャマレ : 「…………また、ひとりぼっちにさせちゃったんだもの…………っ」

[メイン] 古手 梨花 : 「………………!!!」

[メイン] 古手 梨花 : その言葉は─────ここまで、何年も歩んできた道を
梨花の、誰にも見てくれなかった軌跡を、讃えてくれるもので。

[メイン] シャマレ : 泣きじゃくる彼女を支えるように。
そして、その彼女に、支えられるように。
シャマレの顔には、ボロボロと、涙を零れながら。

[メイン] 古手 梨花 : 「しゃま、れっ………!……う、うぅぅっ……!
 私、私っ……!」

[メイン] 古手 梨花 : 「もうっ……ゴール、したい……………」

[メイン] 古手 梨花 : 「もう、嫌なのっ…………!」

[メイン] 古手 梨花 : ─────誰かに、頼る。

[メイン] 古手 梨花 : 梨花の、これまで繰り返してきた世界線では

[メイン] 古手 梨花 : 一度たりとも、したことがなかった。

[メイン] 古手 梨花 : 理解者無き存在ゆえに、それはある意味仕方のないことであったが

[メイン] 古手 梨花 : それが今ここで、初めて発露されたのだった。

[メイン] シャマレ : 人形は誰かに遊ばれるために生まれたただの玩具だ。
表情なんて変わらない、ただ遊ばれて、忘れて、それで終わり。
……こんな人形のことなんか、忘れても良かったのに……

[メイン] シャマレ : それでも────覚えてくれた。
梨花は────アタシの唯一の友達は、呪われた人形を、こんなにボロボロになっても、諦めなかった。

[メイン] シャマレ : 「……ゴールなんかじゃ、ないわ」

[メイン] 古手 梨花 : 「………!」
涙と鼻水でぼろぼとになった顔を上げ。

[メイン] シャマレ : 「ここからが、スタートなのよ……!!
 梨花と、アタシの毎日が……ここから、始まるの!!」

[メイン] シャマレ : ぎゅっと、梨花の手を握りしめて。
それは、初日に出会い、訳もわからないまま振り回されたように。

[メイン] シャマレ : でも、今は違う。
訳が分からないわけじゃない。梨花のお陰で、全部わかった。だから、今度は……アタシが、振り回す番。

[メイン] 古手 梨花 : 「ぁ………」

[メイン] 古手 梨花 : "始まり"。

[メイン] 古手 梨花 : そうか……そうだ……。

[メイン] 古手 梨花 : 私は、この終わらない輪廻のゴールを、ずっと探してきたけど。

[メイン] 古手 梨花 : ……違うんだ、ここから抜け出してからが……"始まり"なんだ。

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの手を、強く握り返し。

[メイン] 古手 梨花 : 「─────うんっ!!!」

[メイン] 古手 梨花 : 涙を溢しながら、満面の笑顔で頷き返したのだった。

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] 古手 梨花 :  

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 : ファイナルチャプター

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 : ひぐらしのなく頃に

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……ッ!────ッ!」
孝太郎は村を走っていた

[メイン] 須賀 孝太郎 : 昨夜の密会から、孝太郎への”目付”はより厳重なものになっていた。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 日の登るうちはまともに行動も出来ず。
ようやく抜け出して、シャマレの行方を追うところ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ──『不思議と姿を見かけない』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 村人の多くは、シャマレを変わったところのある子だと思っており。
それは気に留められていることでもなかったが。

[メイン] 須賀 孝太郎 : もう儀式の実行会が動いたのかもしれない。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……スゥー…………!」
村中を探して、とうとう探していないのは外れの方のみ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : そこは、村から少し外れた開けた森。
村人も整備もしていないのか、人の力が入っておらず、自然が広がるそこ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : どうか、まだ間に合って……!
一心の思いで、森の中を進む。

[メイン]   : ─────そして孝太郎が駆け走る先は……。

[メイン]   : "儀式"の場。

[メイン]   : そこにいるは……二人の少女。

[メイン] 古手 梨花 : 「─────!」

[メイン] 古手 梨花 : 夕暮れの光に反射する、青く長い髪の、小柄の少女と。

[メイン] シャマレ : 「…………!」

[メイン] シャマレ : 夕暮れの光を飲み込む、短く紫の髪の、小柄の少女。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「──!」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 夕暮れの光に溶け込む、黒い男が相対する。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 汗が額を伝い。息絶え絶えになる中で。
ようやく──辿り着いた。

[メイン] 古手 梨花 : 「こ、孝太郎……!?」
大層驚いたように、目を見開かせながら、現れた青年を見やり。

[メイン] 古手 梨花 : イレギュラーにイレギュラーが重なった。

[メイン] 須賀 孝太郎 : シャマレちゃん。でも、隣にいるのは──儀式の最高執行権を持つ、巫女。
梨花ちゃんだ。

[メイン] 古手 梨花 : 梨花にとっては、こんなルートは歩んだことがなかったのだ。

[メイン] 古手 梨花 : ここからは、初めての道。

[メイン] 古手 梨花 : 緊張感が走り、冷や汗が頬を伝う。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
警戒するように、二人に近付く。

[メイン] 古手 梨花 : 「………っ」
梨花もまた、眉に力を込め、警戒するように孝太郎を見やる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 誰もが、この状況を測りかねていた。
孝太郎にとっては巫女は一番に警戒するべき相手だが、ただの巫女が今、生贄と儀礼の場で会う理由はないから。

[メイン] シャマレ : 「………………」
彼は、梨花に気をつけろと言った張本人。
けれどそれは、梨花のことを知らなかったから……とも、取れる。
梨花はようやくアタシに言ったくらいなんだから…………他の人に言えているのか、わからない。

[メイン] シャマレ : 怪しいと、怪しくない……そうは言いきれないが。

[メイン] 古手 梨花 : 実権を持たない、この村では飾りと化している村長─────孝太郎。
梨花の知識では、彼は……儀式に対する、"背教者"。
しかし、それゆえに、自身に対する疑念の深さもまた、梨花は知っており。

[メイン] シャマレ : 「……梨花、安心して」

[メイン] 古手 梨花 : 「…………ほへっ」
シャマレの方を向き。

[メイン] 古手 梨花 : 対応をどうすればいいのか、決めあぐねていたところに─────
シャマレの、頼もしい一言が。

[メイン] シャマレ : 「孝太郎は……優しい人だから
 ……アタシたちを捕まえに来た訳でもないよ
 きっと、探しに来てくれてた」

[メイン] 古手 梨花 : 「シャマレ……」

[メイン] シャマレ : 小さく頷きながら。
そして、梨花の手を、安心させるために強く握り。

[メイン] 古手 梨花 : 「………!……うん!」

[メイン] 古手 梨花 : そして改めて、孝太郎の方へと見やりつつ。
……梨花は、シャマレに……"頼る"ことにした。

[メイン] シャマレ : 「……アタシに一番に忠告してくれたのは……孝太郎だった
 なにか裏があるなら、わざわざそれを言う必要も無いもの」

[メイン] シャマレ : そして、梨花と共に孝太郎へと目を向けて。

[メイン] 古手 梨花 : 全てを背負いこみ、運命を変えようとしてきた少女は
何度その重みに潰れ、敗北を重ねてきたことだろうか?

[メイン] 古手 梨花 : だからこそこの選択は─────新境地なのだ。

[メイン] シャマレ : 「孝太郎も……信じて。
 梨花は、儀式を壊すためにここに来た……
 ……アタシの一番の友達、なのよ」

[メイン] 古手 梨花 : ボクには、私には、"味方"がいる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ”巫女”はこの儀式を滞りなく遂行し、また見守る役目にある。
そのためにはどんな犠牲も払う決意が求められる。たとえそれが、どんなものであろうとも。
──特に、梨花ちゃんは聡い子で村の大人たちからもてはやされて責任感を与えられていた。ある意味では、梨花ちゃんも村の”生贄”として育てられたに等しい。
もしかしたら、信用するべきじゃないかもしれない。

[メイン] シャマレ : 紫の瞳で、黒の瞳を見つめる。
孝太郎と話した時にみせた迷いの色はなく、ただ真っ直ぐに孝太郎へと見つめる。
……説明できる理由なんてない。確証や証拠がある訳でもない。普通なら、信じてくれるかどうかも分からない。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ただ、手を繋いだ二人の姿がいつかの日に重なった。
手を繋ぐ、怯えた男の子としっかりものの女の子。
……しぃちゃん。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
こくりと頷く。

[メイン] 古手 梨花 : 「─────!!!?」

[メイン] 古手 梨花 : 「信じて………くれるの、ですか……!?」

[メイン] シャマレ : 「……………!!」

[メイン] 古手 梨花 : そう、孝太郎が考えている通り─────。
梨花は、この雛見沢村の"象徴"なのだ。

[メイン] シャマレ : ぱぁぁ、と、紫の瞳に光が点る。

[メイン] 古手 梨花 : 失敗の許されない、神主。
儀式の、最高責任者。その立場があるからこそ
孝太郎という、強い味方を作ることが今まで、できなかったのだ。

[メイン] 古手 梨花 : 光明が差し込んできたような、そんな気配を感じ取った。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『村 危ない
 すぐ逃げて』
”背教者”としての言葉を綴り、二人に見せる。

[メイン] シャマレ : そこに書かれた文字は、前に手渡されたものよりもさらに焦りが強く。
筆の字がかすれて見えていた。

[メイン] シャマレ : つまり、逼迫した自体であることを切に伝えていたが。

[メイン] シャマレ : 「…………」
じっと、孝太郎へと目を向け。

[メイン] シャマレ : 「……それなら、アンタは……どうするの?」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……!?」
どうしてこんなに落ち着いてるんだろう。

[メイン] 須賀 孝太郎 : シャマレの言葉に、安心させるように小さく笑って、

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『危ないものを倒す 大丈夫』

[メイン] 古手 梨花 : その宣言は─────梨花の顔を、曇らせた。

[メイン] 古手 梨花 : ……ダメっ……このままじゃ………!

[メイン] 古手 梨花 : 焦るように、シャマレの手を、ぎゅっと握った。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 孝太郎の本来の計画は、こうだ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 監視の強い孝太郎でも儀式の日なら村長の立場から御本尊と接触できる。
その時に、自分の身を犠牲にしてでも──御本尊を破壊する。根付いた因習とともに。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ここで生贄を逃がせばその作戦は大きく成功率が下がりただの捨て身でしかなくなるが、それでもかまわない。
ここでようやく笑顔を取り戻したように見えるこの子が生贄として危険に晒されることを許すわけにはいかない。

[メイン] シャマレ : 焦り何かを祈るように手を握る梨花に、目を開き。
そして、小さく笑いかけてくる彼の顔も。
……シャマレの額に、じっと冷や汗を感じて。

[メイン] シャマレ : 「……それは……ダメ
 きっと……"失敗"する……そうだよね、梨花」

[メイン] 古手 梨花 : 「─────!……シャマレ……
 ……………はい……」
孝太郎の方を向き、申し訳なさげに、こくりと頷く。

[メイン] シャマレ : 首を横に振り。
ちらりと、彼女の方に向けながらも。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………!?」
焦りが強くなって。

[メイン] 古手 梨花 : 「……"捕まる"からです」

[メイン] 古手 梨花 : 「孝太郎が」

[メイン] 古手 梨花 : 今までの"見てきた"ものを、ありありと伝える。

[メイン] 古手 梨花 : 揺るがずに真っ直ぐと、孝太郎の目を見て。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」

[メイン] 古手 梨花 : 私が見てきた世界で……捕まった孝太郎が、その後どうなったのか……。

[メイン] 古手 梨花 : それは、分からない。
何故なら、それを知る前に、私は死ぬのだから─────。

[メイン] 須賀 孝太郎 : その目には村の因習に取り込まれた哀れな少女のものではなく。
自分の意思で運命と戦い続けることを選択しているものだった。
同じ決意をしたものとして、それが分かった。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『信じる』

[メイン] 古手 梨花 : 「………!」

[メイン] シャマレ : 梨花が巻き戻ったことは信じたとはいえ……
いざ、その顛末を目の当たりにすると、流石に……目がくらみそうになるも。

[メイン] シャマレ : 「……孝太郎……」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『どうすればいいか知ってる?』

[メイン] 古手 梨花 : 情けないことに……私は、その対処法を……知らない。

[メイン] 古手 梨花 : 「……ごめんなさいなのです……ただ」
首を横に振りながら。

[メイン] 古手 梨花 : 「儀式前まで、腕の立つ者が、孝太郎の牢獄を監視する……
 という情報までしか……」

[メイン] 古手 梨花 : 申し訳なさげな顔で、しょんぼりとする。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
腕の立つもの、という言葉に。
ひやりとした感触が首に蘇った気がした。

[メイン] 古手 梨花 : 「その監視の目をどうにか欺ければ……
 ………みぃ……多分それは……非現実的なのです……」

[メイン] シャマレ : 「……腕の立つもの……
 ……村のみんなの中に……特別強い人がいそうには思えないけど……」

[メイン] 古手 梨花 : 「その監獄を抜けても、見張りはたくさんいるなのです……
 ボクもだから、その場所に近づくことさえできなかったので……」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『飛段』
直感してその名前を書いた。

[メイン] 古手 梨花 : その文字を見て、梨花の脳裏の記憶を巡らせる。

[メイン] シャマレ : この数日間、様々な村人と接してきた。
パッと見て優しい人々たちであって、あの中に腕っ節の強い誰かが居るなんて到底思えない……の、だったが。

[メイン] 古手 梨花 : ─────あの日。そう、儀式前に……いなかった人物は、誰?

[メイン] 古手 梨花 : 目を開く。

[メイン] 古手 梨花 : 「………あの時、飛段は……いなかった、なのです」

[メイン] シャマレ : 「…………飛段が……?」
あの、快く笑いかけてきた、青年が……?

[メイン] シャマレ : 「…………!」
梨花の言葉に、ごくり。信憑性が増して。

[メイン] 古手 梨花 : こくりと、シャマレに頷く。

[メイン] 古手 梨花 : 「……飛段は……"執行人"なのです」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 同意を示すように頷く。

[メイン] 古手 梨花 : 「儀式で……生贄となる者の首を刎ねる……」
服の裾を、きゅっ、と握り締めながら。

[メイン] シャマレ : 「…………っ……!」

[メイン] シャマレ : ぞわり。何も無いはずなのに、鎌で喉元を撫でられたような感覚がして。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『飛段さん なんとかする』
自棄ではなく、確かな希望に裏付けられた約束として。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『二人 逃げて』

[メイン] 古手 梨花 : 「えっ………!?」
冷や汗と、信じられないという驚愕の顔。

[メイン] 古手 梨花 : 梨花の中には─────狂人・飛段の姿しかなかった。

[メイン] 古手 梨花 : この村における、武力最強。

[メイン] 古手 梨花 : 例え何人立ちはだかったとしても、一瞬で返り討ちにできてしまうほどの男。

[メイン] 古手 梨花 : 「な、なんとかって……そんなの、無茶があるのですよッ!!!」

[メイン] 古手 梨花 : なんとかなるというビジョンは、梨花には思い浮かばなかった。

[メイン] シャマレ : 梨花の顔色が変わった所を見るに、相手は相当な相手なんだろう。
……実際、アタシも……腕っ節であることすら、わからなかった。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『儀式に巻き込まれることない』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 梨花ちゃんは家の都合として。
シャマレちゃんも村の因習のため。
単に巻き込まれただけだ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : なら、片付けるのは村長一人で十分だ。
お飾りでもなんでも須賀孝太郎はこの村の村長で、ここで生まれ育ったんだから。

[メイン] シャマレ : 顔が……歪む。
……ここで、大人の、男の、村長の彼に任せることは……簡単。きっと頼めば、アタシ達が出ていくまで場を保ってくれる。

[メイン] シャマレ : ……けど、そんなので……いいの?

[メイン] シャマレ : ……アタシは梨花に、数え切れないくらい何度も助けられた。
そしてそれを知れたのも、孝太郎がアタシにメモを握らせてくれたから。

[メイン] シャマレ : その二人に……恩返しも出来てないのに……逃げるなんて……
それは、"操り人形"でしかない。

[メイン] シャマレ : 「……イヤだ」

[メイン] 古手 梨花 : 「………!!」

[メイン] シャマレ : 「……梨花を一人にさせないって言ったんだ……
 ……孝太郎も、一人で頑張らせないよ」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「  ?!」
ぱくぱくと口が動き。

[メイン] 古手 梨花 : ─────これは……"新しい風"。

[メイン] 古手 梨花 : 私の、想像を遥かに超える世界が、今ここに………!?

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『ダメ』
急いでグチャグチャになった文字を書き足す。

[メイン] 古手 梨花 : 「っ…… ……孝太郎……ボクから……お願いするのです」

[メイン] 古手 梨花 : 真っ直ぐと見つめ。

[メイン] 古手 梨花 : 「……ボクは……私は、"スタート"するなら」

[メイン] 古手 梨花 : 拳を、ぎゅっと握り締め。

[メイン] 古手 梨花 : 「……最っ高に……勝ちたいのよッ!!!」

[メイン] シャマレ : 「……梨花……!!」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「────ッ!」

[メイン] 古手 梨花 : 「アンタもねっ!!……背負ってるもん、あるんでしょ!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「だったら……私みたいに!!
 ……お互いに、甘えて、寄り添って……頼って!!
 …………笑って、勝ちを、取ってみようじゃないのよッ!!!」

[メイン] 古手 梨花 : もう、自分を隠す必要なんて……無いッ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『ごめん』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『大人になった』

[メイン] 古手 梨花 : ぐすっ、と少し、感極まり涙目になりつつ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 過疎化の進む村で、小さい頃から見てきたため。
梨花ちゃんへの印象はずっと子供のままだった。

[メイン] 古手 梨花 : 「そうよっ!」

[メイン] 古手 梨花 : 「私……もう、アンタよりも……"大人"なんだから!」

[メイン] シャマレ : …………これが、梨花の本当のウラ。
洞窟で見せたあの時と変わらない、アタシの知らない、これから知る……梨花。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『二人は守る
 だからお願いする』

[メイン] 古手 梨花 : 強く頷く。

[メイン] 古手 梨花 : 「私達も─────アンタを守る
 ………ね?」
シャマレに、自信たっぷりな笑顔を。

[メイン] シャマレ : 小さく、確かに頷く。

[メイン] 古手 梨花 : これが─────絆の、力なんだ………!!

[メイン] 須賀 孝太郎 : いつこんな風に任せられるくらい、大人になっていたんだろう。
感慨と。そして、今まで一人で抱えてきたことに仲間ができた思いで。

[メイン] 古手 梨花 : 運命は……変えられるッッ!!!

[メイン] シャマレ : 「……ふふっ、そうね」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……っっっ」
涙が……

[メイン] シャマレ : 固く握りしめられた梨花の手を、包み込むようにして答えながら。

[メイン] シャマレ : そしてもう一つの手を、孝太郎の手に、握りしめる。
小さな、けれど握る力は強く。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 今度こそ守る。過去のやり直しじゃなくて、今僕を助けてくれるといった仲間のために。
乱暴に袖で目を拭って、強く握り返す。

[メイン] 古手 梨花 : ─────確実に、繋がった。
手と手だけじゃない、心も。

[メイン] シャマレ : 握り返された感覚に、こくり。
そして、繋がれた二つの手を、うんと、めいっぱい掲げる。

[メイン] シャマレ : 「アタシたちは独りじゃない。今までもずっと────!」

[メイン] シャマレ :

[メイン] シャマレ :

[メイン] シャマレ :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 :

[メイン] 須賀 孝太郎 : 雛見沢村は古い村だ。
都市では失われたような、昔の時代の名残が多く残っている。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 村長宅地下──座敷牢。
この設備もその一つだ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 梨花ちゃんの言った通り、村に戻ったあとすぐに上層部の使いがやってきた。
走り回る姿を村中に見られたら、監視の手が追ってくる……頭が回ってなかったけど、梨花ちゃんの予言めいた言葉は本物だった。
表向きには急病で屋敷に……ということになるようだが、実際はこの通りの監禁だ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : そして、当たっていたのは捕まることだけじゃなく。
付けられる見張りも──

[メイン] 飛段 : 「気分はどうだァ?村長サン」

[メイン] 飛段 : 短刀や鍬などではない、鮮血すら想起させる赤色の鎌を背負ったまま

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
赤い鎌。”執行人”として処刑を許されたときに、飛段さんが使うものだ。
あの人が、その気になれば僕はすぐにでも死ぬ。緊張に汗が滲みつつ。
メモを取り出そうと──
筆記具が取り上げられていた。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 悲しい顔になった。

[メイン] 飛段 : 「悪ィなァ、心は痛むが"そういうこと"らしい」

[メイン] 飛段 : もう何もするなと言う村側の封殺表明を、暗に孝太郎に突きつけながら欠伸をし、孝太郎の近くに座り込む

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「………………」

[メイン] 須賀 孝太郎 : でも何もできないわけじゃない。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……ッ!!」
指をガリっと噛んで。
血が滲む親指を壁に立て。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『は
    な   し』

[メイン] 飛段 : コートからカッターナイフを置いて、代わりにタオルを取り出し鎌を拭こうとした矢先に─────

[メイン] 飛段 : 「……へェ」

[メイン] 飛段 : 「歯ァ痛むぜそれ、慣れてねえとなァ」

[メイン] 飛段 : カッターナイフを滑らせ、孝太郎の方に

[メイン] 須賀 孝太郎 : 手に取って。

[メイン] 飛段 : 無言の話を聞く、と言う声明である
自信を傷つけてまで話したいと言う意志に対し応えたのか定かではないが、確かに今飛段は村側が与えた役の職務放棄に近い状態であった

[メイン] 須賀 孝太郎 : 飛段さんなりの優しさにぺこりと頭を下げる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 粗い壁でこすれた指が痛みを発し、流れる血にも限界がある。
端的な言葉で興味を引かないといけない──この、普通とはまったく価値観が異なる男を前に。

[メイン] 飛段 : 「……続けろ」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 人差し指に刃を滑らせる。一度使った指は血が出にくい。
事実上、残り8言だ。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『しャマレ りカ』

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『ギしキ こワス』
残り7。

[メイン] 飛段 : 目を細める

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『助 いル』
6。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『タノミ』
5。もう右手が使えない。
無事な左手で飛段を指さす。

[メイン] 飛段 : 「オレについて知った上で、頼みねェ」

[メイン] 飛段 : 面白そうに、続けるように促す
飛段にこの一連の行為を止めるつもりは無さそうだ

[メイン] 飛段 : 「仕方ねーなァ言ってみろ」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『二人ノ助 ナル』
4。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 指が一つ、また一つと折られていく。
前の夜のように。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『ムラ ズっト ギシキ』
3。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『つづケてル コワス』
2。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『キョうミ?』
1。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 一つの問いかけのために、もう……一本の指しか残りが無い。
指は人体の神経が集まる場所だ。痛みで頭がジンジンとする。

[メイン] 飛段 : 「はァ……ん」

[メイン] 須賀 孝太郎 : これでダメなら──もう、文字通り後はない。
痛みを抱えながら、飛段さんの目を見る。

[メイン] 飛段 : 「…………」

[メイン] 飛段 : にたぁ、と笑って

[メイン] 飛段 : 「理由と、その際のメリット」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………!!」
目を見開いて。

[メイン] 飛段 : 「教えろよなァァ!?」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 無茶を言っている──
残り1本の指で。書けるわけが無い。

[メイン] 飛段 : 理由とメリット、それを飛段に伝わるように
尚且つ飛段がそちらに着くだけの利点を、狂信者としての"ウラ"を投げ捨ててでもいいだけの納得を
つまるところ無茶振りそのものだ

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………」
目を瞑る。無力感が胸の中に広がっていく。
友達一人守れなかった、昔みたいに……。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 違う。

[メイン] 須賀 孝太郎 : そうじゃないんだ。守れなかったことを考えちゃ……いけない。
今から守らなきゃいけないんだ……あの子たちを!

[メイン] 須賀 孝太郎 : ずっと記憶の中で、霧雨の降る森の中で僕に助けを求めていたしぃちゃんが
──笑った気がした。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ナイフを持ち──

[メイン] 須賀 孝太郎 : 『リユウ』
0!足りない!!

[メイン] 須賀 孝太郎 : 次!

[メイン] 須賀 孝太郎 : ナイフを持ち。

[メイン] 須賀 孝太郎 : ”手のひら”へ──

[メイン] 飛段 : 「……ヒヒッ」

[メイン] 飛段 : 「ヤってんなァァァ!!」

[メイン] 飛段 : 手首を掴み、その動きを阻害する

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「……ッ!?」

[メイン] 飛段 : そのまま手首を掴んだまま、机に置かれている空の皿を手に取り
こちらの足元に引き寄せて

[メイン] 飛段 : 「ンでもって、よォ」

[メイン] 飛段 : 「チンタラしてっと」

[メイン] 飛段 : 手首を押さえつけたまま、引き寄せる
それは即ち──

[メイン] 飛段 : 「クるぜェェ……時間がなァ!!」

[メイン] 飛段 : 飛段は、孝太郎の手首を握ったまま、孝太郎にナイフを握らせたまま
自身の腹部にそれを近づけた後

[メイン] 飛段 : 何の躊躇いも無く自身の腹をそのナイフで切り裂いた

[メイン] 須賀 孝太郎 : 「…………!!?」
予想外の行動に、目を見開いて。

[メイン] 飛段 : 鮮血が舞う

[メイン] 飛段 : 切り裂かれた腹からは血が夥しく流れ

[メイン] 飛段 : あたり一面を赤に染めると同時に、足元に置いていた皿を満たす

[メイン] 飛段 : 「気持ちイイイイイイイイイイイイ!!!」

[メイン] 須賀 孝太郎 : 反射的に手放したナイフが地面に落ちてからりと音を立てた。

[メイン] 須賀 孝太郎 : 目は驚愕に見開き、たとえ言葉を発せても何を言えばいいか分からなかっただろう。

[メイン] 飛段 : 恍惚とした表情で、雄叫びを上げる
それに鼓動し、更に更にと血が舞い散る

[メイン] 須賀 孝太郎 : ”狂信者”……!

[メイン] 飛段 : 「ヒャッヒャハハハハハ!!!!」

[メイン] 飛段 : イカれているのだろう、しかしこれもまた流儀の一つなのかもしれない

[メイン] 飛段 : 血に満ちた皿を孝太郎のそばに置いて

[メイン] 須賀 孝太郎 : 僕は歯を食い縛って、誰かを守るために相応の努力をした。──飛段さんに言われたことを、少しでも理解して実行したつもりだったが。
この人は自分の楽しいことのために、笑いながら……こうも簡単に差し出せるのか。
改めて、目の前の男の狂気に背を震わせる。

[メイン] 須賀 孝太郎 : まさか──!?
差し出された皿に、戦慄の目を向けて。

[メイン] 飛段 : 「見ててくださいよォォォォカミサマァァァァァ!!!!オレすっげェ本気で今からささげますからァァァァァ!!!!」

[メイン] 飛段 : べちゃ、べちゃと血を塗りたくり、一面に塗りたくって

[メイン] 飛段 : 一つの魔法陣のような物を完成させる
これ即ち儀式の陣、これをその場で敷き飛段は己の血をぼとぼとと垂れ流して

[メイン] 飛段 : 「……アァァァヒャハハハハ、ハ……」

[メイン] 飛段 : 笑い疲れたのか、その場でぜぇぜぇと息を整えた後に
最後の出せる血で、陣の中に文字を描く

[メイン] 飛段 :  
    承


[メイン] 飛段 :  

[メイン] 飛段 :  

[メイン] GM :  

[メイン] GM : 儀式の日の夜。

[メイン] GM : 村全体の明かりが消え、儀式が行われるこの場所以外はシーンと静まりかえっていた。

[メイン] GM : この場には巫女である梨花、生贄のシャマレ、そして飛段と村長を除く村の人たちが集まっていた。

[メイン] 古手 梨花 : ─────蝉の声はもう……しない。
青髪の少女は、儀式用の巫女装束へと着替えさせられ
この村に住まう神とやらに祈りを捧げるための、舞踊を演じていた。

[メイン] 古手 梨花 : その心中は晴れやかではなく、緊張一色であった。
何周をも、この踊りをしてきた身でありながらも
今回ばかりは、訳が違った。

[メイン] 古手 梨花 : ……この儀式には、名ばかりの村長は同席することを許されない。
それ故に、その生死がどうなったか……今の梨花は、知る余地すら無かった。

[メイン] 古手 梨花 : 神へと捧げる巫女の舞踊は、数十分に渡って行われる。
その間に─────生贄として囚われているシャマレへと、目線を送り。

[メイン] 古手 梨花 : 真剣な表情、真剣な眼差しで。

……大丈夫……よね。

そう確かめるような、不安漂う顔色を、送るのであった。

[メイン] シャマレ : 目を向けられた少女────舞台の中心にいる、ちょこんと座った彼女。
いつものぬいぐるみは抱えているが、服装はいつものゴスロリではなく、儀式用の白衣に変えられている。

[メイン] シャマレ : 目線にこくりと頷くが、その瞳には梨花と同じように、緊張の目が。
もちろん、孝太郎の安否、梨花の舞、気になる事は多々あったが。

[メイン] シャマレ : シャマレの周りに囲むように立ち並ぶ人達。
布で顔を隠し、白装束で身を包んだ人たちは、性別すらもわからない。

[メイン] シャマレ : シャマレが怖がり逃げ出そうとしても、捕まえるための要員。
……梨花からはこちらからアクションをしない限りは、動かないとは聞いていたけど……

[メイン] シャマレ : いざ、こう立たれると……気味が悪い。
人の筈なのに、人の心地が……しない。

[メイン] シャマレ : バレないように目線を交わし、そしてその不安を押し付けるように、モルテを抱きしめる。

[メイン] 古手 梨花 : 「……………」
……シャマレ……そう、よね……。

[メイン] シャマレ : 震える少女は、彼女たちの思惑を知らない村人からすれば、都合のいい生贄と考えられているのだろう。

[メイン] 古手 梨花 : 不安、よね……だって、そうだもの。
シャマレは私と違って……この儀式は、初めてだもの。

[メイン] 古手 梨花 : ……私を、カッコよく手を引いてくれたシャマレは、その、すごかったけど……。
でも……シャマレは、子どもなのよ。
……しっかりしなくちゃ、私が不安がってちゃ、しょうがないわ。

[メイン] 古手 梨花 : ……奇跡は、起こる……。
そう、よね………!

[メイン] 古手 梨花 : 眉に力を込め、気合を入れ直し、やがて梨花の舞踊は終わる。

[メイン]   : ─────そして、村人達の騒めきは、止む。

[メイン]   : 静寂とした中、村人の1人が執行人の登場を促すように口を開く

[メイン]   : 10秒、20秒………そして1分と時は経つ

[メイン]   : しかし、執行役はいつになっても現れない
この事に違和を覚えた村人達は響めき始め、静寂とした空間が騒々しくなる

[メイン]   : 真っ先に口を開いた村人は、堪らずその場を離れ飛段を呼び出しに駆けようとし─────

[メイン] 古手 梨花 : 「……………?」
……今ままで見てきたものと、明らかに違う、光景。

[メイン]   : それがその村人の最期であった
ぽとり、と音が鳴る

[メイン] 古手 梨花 : 緊張に、さらに眉に力が込められ。
ごくりっ、と唾を飲み込むと─────。

[メイン] 古手 梨花 : 「─────っ!?」

[メイン]   : 暗い暗い闇夜に、真っ赤な血の滝が上へ、上へと

[メイン] 古手 梨花 : 惨劇の光景。
しかしそれは─────今まで、見たことが、無いものッッ!!

[メイン]   : 落ちたのは─────人体の急所である首

[メイン] 古手 梨花 : ま、まさかっ………!?
まさか、本当に………!?孝太郎は……孝太郎は………!?

[メイン] 古手 梨花 : あの、狂人・飛段を………動かしたの………!?!?

[メイン] シャマレ : ごくり、息を呑んでいる暇などなく────。
目の前に上がった血しぶきが、シャマレの白装束を、赤く濡らす。

[メイン]   : また1人村人が騒ぎ、あるいは悲鳴を上げる

[メイン]   : その瞬間には、先程と同じ光景が繰り返されており

[メイン] 古手 梨花 : 「きゃっ…………!?」
思わずその痛々しい光景に、目をギュッ!と瞑りつつも。

[メイン]   : 月明かりに照らされて、その凶器をその場の者共は見る事になるだろう

[メイン] 古手 梨花 : ─────ゆっくりと開かれる、瞼。

[メイン] 古手 梨花 : 大きな満月をバックにする、一人の男の姿を、捉える。

[メイン]   : それ即ち紅の鎌
これを持ち、凶器としてこれを十全に使いこなせるものなどこの村には1人しかおらず

[メイン] 古手 梨花 : 「………飛段……!!!」

[メイン] シャマレ : 「……っ」
その光景に、瞳孔が大きく開かれるが。
その開かれた瞳孔に、ばたり、ばたりと、首のない人であったものが倒れていく────

[メイン] シャマレ : その先に、首狩の執行者が立っていた。

[メイン] 飛段 : 「あーまァそういうことだなァァァ……!」
首をゴキゴキと鳴らし、満月をバックにした男は答える

[メイン] 古手 梨花 : 今まで梨花は、散々この男によって苦しめられてきた。

[メイン] 古手 梨花 : 時には、この男によって直接─────この首を断たれたことすらもある。

[メイン] 古手 梨花 : だけど……今は、今、この時だけは─────!

[メイン] 古手 梨花 : ……なんて、頼もしく見えるのだろうか。

[メイン] 古手 梨花 : 「─────ありがとう……!!」

[メイン] 飛段 : その間にも処刑人は、次々と首狩りを続行する

[メイン] 古手 梨花 : 飛段に頭を下げ、そしてすぐさま─────混乱に乗じて
村の幹部達の目を掻い潜り、そしてシャマレの方へと走り出す。

[メイン] シャマレ : 影明かりに照らされる男は、初めて出会った時とは全く違う────。
その印象が裏表変わったような姿に、目を見張りながらも。

[メイン] 飛段 : そもそも飛段と呼ばれる男は狂人の前に狂信者、この男が役目を放棄し殺戮に努めるのにも一定の理由というものは存在する

[メイン] 飛段 : 無造作に指を2本、立てた後に折り曲げる

[メイン] 飛段 : 1つ、孝太郎……お飾りの村長が自分の全てを投げ打ってでも救い出そうとする姿に感動を覚えたからだ
と言っても、世間一般で言われる感動とは違うベクトルであるのは留意すべき事だが、それを見てオモテの顔を刺激されたからなのは確かだろう

[メイン] 飛段 : 2つ、神とは即ち神主である
定まった教義のない因襲であったからこそ、神の代行を務める者が儀式において絶対
そして、それを今までの神主はそれを常に主導する立場でありそれは神の御言葉であるので飛段は嬉々として従ってたわけなのだが

[メイン] 飛段 : 教義は定まってない、神の代行者は今回はイヤだとハッキリ申し出ましたと
さあウラの狂信者は何を狂信したらいいのでしょうか?

[メイン] 飛段 : 「──っぱアレだなァ……」

[メイン] 飛段 : 「1人より2人のが性分にあってるぜェ!!」

[メイン] 飛段 : ならば自身の趣味嗜好に従いより多く殺せる方に移った、というわけだ

[メイン] 飛段 : そうも言いつつ、また一人殺す
殺戮は止まらない

[メイン] 飛段 : ───この夜の中、夜目が効く者と効かない者

[メイン] 飛段 : どちらが有利など、一目瞭然だろう

[メイン] 飛段 : 血が更に舞い上がり、天も月が紅く染まるかのような殺戮の果てに

[メイン] 飛段 : 飛段は高らかに恍惚し、嘲笑う

[メイン] 古手 梨花 : その笑い声を背に、梨花は─────走る、走る、走る。

[メイン] 古手 梨花 : 脳裏に浮かび上がるは、迫り来る鎌の光景。
決して彼に、背など向けてはならなかった。
梨花の細い首など、いとも簡単に断ち切られてしまうのだから。

[メイン] 古手 梨花 : しかし─────今だけは、"信頼"し切っている。

[メイン] 古手 梨花 : 孝太郎に、そして飛段に。

[メイン] 古手 梨花 : そして梨花は、白装束のシャマレの下へと駆け寄り。

[メイン] 古手 梨花 : その手を、強引に掴むッ!

[メイン] 古手 梨花 : 「シャマレ!このまま─────この村から、逃げるわよっ!!」

[メイン] シャマレ : 目の前に散らされるのは、赤の花。
瞳に移っていく色は、黒い夜に紛れていく。

[メイン] シャマレ : その瞳に移ったのは────青。
それが見えると同時に掴まれた腕は、ぐいっと上に引っ張られ。

[メイン] シャマレ : 掴まれた彼女へと、目をやるも。

[メイン] シャマレ : 「……いや。まだアタシには、やることはある」

[メイン] 古手 梨花 : 「………えっ!?」

[メイン] 古手 梨花 : 目を大きく見開かせながら。

[メイン] 古手 梨花 : 「やることって……一体……!?」

[メイン] シャマレ : 「…………」

[メイン] シャマレ : その言葉に、辺りへと目をやる。倒れた亡骸が散らばる場を。

[メイン] シャマレ : シャマレは、自分のせいで周りに迷惑が掛かっていたことを恐れていた。
彼女に取りついた幽霊のせいで、他人が怪我することも、折角できた友達が、忌避の目で見てくるのも。もう……こりごりだった。

[メイン] シャマレ : そしてこの血しぶき吹く場は、シャマレを引き金となって起きた事件だ。

[メイン] シャマレ : それなのに、縮こまっては、いられない。

[メイン] シャマレ : 「……梨花。アンタが始めたこのループは、今回で終わる。
 でもその原因を作ったのは……このアタシだ」

[メイン] シャマレ : 「だから……その責任をもって、アタシの手で終わらせてみせる」

[メイン] 古手 梨花 : 「─────っ!?……で、でもシャマレ……!」

[メイン] 古手 梨花 : 「終わらせるなんて言っても……どう、やって……!?」

[メイン] 古手 梨花 : 梨花には分からなかった。
新たに拓かれた道の、その道標が。

[メイン] シャマレ : そして────目を向ける。
この嵐のような場でも、平然とした顔をするような仏像。
────”ご本尊”を睨みつけながら。

[メイン] 古手 梨花 : 「…………!?……ま、まさか……!」

[メイン] シャマレ : 「……梨花には、言ったでしょ
 アタシには……もう一人、友だちがいるのよ」

[メイン] 古手 梨花 : 「……シ、シャマレ!でも聞いて!……私も、この運命を
 ブッ壊してやろうって、そう思って……
 何度も何度も!神を壊そうって、挑戦してきたけど……!!」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの肩を掴み、真っ直ぐと見つめる。

[メイン] 古手 梨花 : そう、梨花は当然のことながら試したのだ。
御本尊を壊すというチャートを。
その結果は、"壊せなかった"。

[メイン] 古手 梨花 : 名刀であったとしても、壊れるのは刃の方。
どれだけ磨き上げられた刀であっても、あっという間に刃こぼれとなった。

[メイン] 古手 梨花 : 「も、もう一人の、友達……それって……」

[メイン] 古手 梨花 : 冷や汗を垂らしながら、視線は─────シャマレの手元へ。

[メイン] シャマレ : 肩を掴まれ、その真剣な瞳に、ぐっと抑え込まれながらも。
言いたい事は、わかる。
なぜなら、こうして今も鎌が振り回されている場であるにもかかわらず────祀られるようにして立っているご本尊には、赤の一つもついていないのだから。

[メイン] シャマレ : こくり、と頷いて。

[メイン] シャマレ : 「……モルテには、ふしぎな力があるの」

[メイン] シャマレ : 「モルテは、そのふしぎな力で、周りの人を困らせる
 ケガさせたり、怖がらせたり、暴れたり」

[メイン] シャマレ : 伝承などではない、シャマレ自身の不可解な経験。
それを通して理解した、モルテの性質を語っていく。

[メイン] シャマレ : 「……でも、いつもモルテだってそうできるわけじゃない
 お腹が空いたときは、”ごはん”を食べるの────」

[メイン] シャマレ : 「人のマイナスな感情を。モルテは、それを飲みこんで、どんどん誰かを呪おうとする」

[メイン] 古手 梨花 : ごくりと、生唾を飲み込みながら聞く─────シャマレという少女に
憑りつく、一つの……大きな"呪い"。

[メイン] シャマレ : マイナスな感情。それは、恐怖、悲しみ、怒り、絶望。
────まさしく今の状況が、それらの感情を渦巻いていた。

[メイン] 古手 梨花 : 「そ、それじゃあ……シャマレは、もしかして……」

[メイン] 古手 梨花 : 視線をゆっくりと、真っ暗な洞窟内の祠へと移す。

[メイン] シャマレ : 「……モルテに頼むのよ、”神様”を呪ってくれ、って」

[メイン] シャマレ : こくりと頷き、そちらへと目を向ける。

[メイン] 古手 梨花 : 「……………………」

[メイン] 古手 梨花 : ─────梨花は……考える。

[メイン] 古手 梨花 : そもそも、この村から無事に二人で脱出できたとして……。

[メイン] 古手 梨花 : 自分の身に起きている、"不思議"な現象。
"死"による、世界線のループ。

[メイン] 古手 梨花 : 未だ、解明ができていない。予測すらも立っていない。
……それが、梨花にとっては今の、唯一の不穏要素でもあったのは
言うまでも無いことだろう。

[メイン] 古手 梨花 : だからこそ─────賭けてみたくなった。

[メイン] 古手 梨花 : 「…………そう、ね……」

[メイン] 古手 梨花 : 目を閉じながら。シャマレの手を、ギュッと握り。

[メイン] 古手 梨花 : 「……ええ、そうよ、ここまで私は、私達は……来れたのよ」

[メイン] 古手 梨花 : 「だったらッ………!!」

[メイン] 古手 梨花 : 「こんな盤面、もう何か何まで、ひっくり返してやろうじゃないのッ……!」

[メイン] 古手 梨花 : 勝つなら……!もう、ドン勝ち一択よッ!!

[メイン] シャマレ : 「……!!!」

[メイン] シャマレ : 「……別に、梨花だけ逃げたって、アタシは構わない……
 呪術に、梨花も巻き込まれるかもしれない……
 ……それでも、いいのね」

[メイン] 古手 梨花 : シャマレの方を向き、そして強く……頷く。

[メイン] シャマレ : その言葉に、ハッとした顔になりながらも。
少し首を振り、そう言い返す。

[メイン] シャマレ : 呪術には、代償が伴う。
人を呪わば穴二つ。それが神であろうなんであろうと、代わりはない。
自分が誰かを妬み恨み、呪う。それは、呪った本人の精神を消耗させていく。

[メイン] 古手 梨花 : 「……言っておくけど、私の方が、シャマレと長くいたのよ?」
ニヤりと笑う。

[メイン] シャマレ : それが引き起こす影響は、周りにいる梨花すらも巻き込むとも考えられたが。

[メイン] シャマレ : ぽかんとした顔になり、そして、少し笑う。

[メイン] シャマレ : 「そうだったね。……梨花、人が変わったみたい。
 ……元々が、今の梨花なんだろうけど」

[メイン] 古手 梨花 : 「ふふ、シャマレにはこれから、慣れていってもらうわよ?」

[メイン] 古手 梨花 : そう─────"これから"が、私達には……あるのよッ!

[メイン] シャマレ : こくりと頷き、そして繋いだ手のまま、足を走らせる。
終わらせるために、そして────始まらせるために。

[メイン] シャマレ : 儀式の日だからか、ご本尊は普段の洞窟の先ではなく。
シャマレがいたその先、台座のように鎮座するように置かれていた。

[メイン] シャマレ : 高い位置に置かれた御本尊は、まるで人を見下すように。
顔は変わらないのにどこか悠々とした態度で、こちらを見つめるようで。

[メイン] シャマレ : 気味の悪い視線にも負けず、手をつないだまま、その先へと昇る。
一歩一歩、階段を上っていく。

[メイン] シャマレ : 御本尊には血の一滴もない。
だが、その代わりと言ったように────台座に染みつくは、赤黒い何か。
闇夜に紛れない、生命の主張だったそれが、痕跡として残されていた。

[メイン] シャマレ : 「…………っ」

[メイン] シャマレ : ……アタシだけじゃない。
きっと、これまでも、これからも、生贄は……生まれ、捧げられてきた。
何度も、何度も、それを繰り返してきたんだ。

[メイン] シャマレ : じゃなきゃ…………モルテの気配が、こんなに濃くなることなんか……ない。

[メイン] シャマレ : ……こんなに、モルテが暴れたがってるのは、息遣いが荒いのは、初めてだ……

[メイン] シャマレ : そんな、シャマレが思考していれば────。

[メイン] シャマレ : ドン、ドスン、ガラガラガラッ!!!!

[メイン] シャマレ : ここから東の方角────村のある場所から聞こえる、遠くもはっきりとした音。
それをきっかけに、ぽつぽつ、ザーー……!!!と、雨音が強くなっていく。

[メイン] シャマレ : 始めに起きたのは、岩雪崩、土砂崩れ。それをきっかけに、雲一つなかった空に、急に豪雨が振り立てる。
まるで────生贄が用意されないことに、怒った神の罰のように。

[メイン] シャマレ : ……!……きっと、関わってない人たち孝太郎が避難させてるはず……
でも、それじゃ追いつかない……早く、しないと……!

[メイン] シャマレ : 冷や汗を額に浮かべ、そして向かう。
のっぺりとした御本尊に、睨みつけるようにして。

[メイン] シャマレ : 「……アンタ、お腹が空いてるんだってね
 でもね、アタシだって、ただで食われるつもりはないの」

[メイン] シャマレ : 手に持った人形を、掲げる。
手の中で人形は感極まったように、小刻みに震える。

[メイン] 古手 梨花 : ─────シャマレの手に添えるように、梨花もまた掲げる。

[メイン] シャマレ : 「腹が空いた同士、仲良くなれるんじゃない……
 お遊戯の時間だよ、モルテ。」

[メイン] シャマレ : 何度も何度も時を繰り返し、巫女としての力を持ったその手。
何度も何度も感情を食らい、呪いとしての力を持った人形。
その二つが掲げられ────。

[メイン] シャマレ : 「……ありがと」

[メイン] シャマレ : ぶわり、モルテから────持っていられないほどの、圧を感じる。
だらだらと、冷や汗を流すも。
────持っていられるのは、それを支えてくれる友達がいるから。

[メイン] 古手 梨花 : 冷や汗を掻きながらも、ニコりと笑い。

[メイン] 古手 梨花 : 「お互い様なのですよ、にぱ~☆」
わざとらしく、シャマレの緊張を宥めようと
初めて出会った時の梨花の、あざとい口調で。

[メイン] シャマレ : 「…………ふふっ」

[メイン] シャマレ : 初めて出会った時には見せなかった、ニコリとした笑顔。
押しつぶされそうな緊張は、和らいで。

[メイン] シャマレ : 「……この”因習村”は……今日で、終わりだよ────!」

[メイン] シャマレ : 一瞬、シャマレからマイナスな感情を煮詰めたような、どす黒い圧が二人を襲う。

[メイン] シャマレ : 拒絶するような力は、二人を吹き飛ばすように。

[メイン] シャマレ : ……っ、この力……耐えきれない……!!!

[メイン] 古手 梨花 : うっ………!すごい、圧……!?

[メイン] シャマレ : 「……梨花!」

[メイン] 古手 梨花 : 「……シャマレ!」

[メイン] シャマレ : 「離しちゃ……ダメだからね」

[メイン] シャマレ : 手を握る。

[メイン] 古手 梨花 : 「そっちこそ、離したら……死んでも、許さないわよっ!」

[メイン] 古手 梨花 : 手を握る。

[メイン] シャマレ : そして、めいいっぱいの光が、空で破裂するように光り────。

[メイン] シャマレ : 二人の意識は、そこで掻き消えた。

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[メイン]   : ─────あれからどうなったのか?

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[メイン]   : みーんみんみん。

[メイン]   : 忙しなく、蝉の鳴き声が聞こえる。

[メイン]   : 痛いくらいに眩しい、夏の日。

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[メイン] ???? : ─────青髪の女性が、空を見上げる。

[メイン] ???? : 「……今日も、暑いわね」

[メイン] ???? : フッ。と微笑を浮かべる。

[メイン] ???? : ……少し、懐かしい夢を見たわね。

[メイン] ???? : ……ええ、本当に、懐かしいわ。

[メイン] ???? : 過去に囚われた小鳥の、記憶─────。

[メイン] ???? : 晴れない霧雨が降る森を、彷徨うことしかできない、無力で、非力な少女の物語。

[メイン] ???? : ─────でも、暁は昇る。

[メイン] ???? : 終わらない夜など、存在しない。

[メイン] ???? : 今日という日は、永遠になど続かないのだから。

[メイン] ???? : 人は乗っていくのよ。

[メイン] ???? : ─────明日方舟に。

[メイン] ???? : 「……そういえば」

[メイン] ???? : 「今日は……"あの子"と、久しぶりに会える日だったかしらね」

[メイン] ???? : 女性は、夏の陽炎に揺られながら、道を歩いていくのだった。

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